記憶術あれこれ

「一流の記憶法」 六波羅穣 を読んでみた

目次

この本を取り上げた理由

Amazonのレビューが300件近くあり、おおむね高評価だった事から読んでみる事にしました。

2017年に刊行して、うたい文句は5万人以上が読んだとの事です。もちろんunlimited、つまり実質無料で読める事は背景にあるでしょうが、とにかくレビューが高評価でした。

それで、この本を読んでみた私なりの印象はこうです。

ひとこと書評

比較的高度な受験勉強の方向け。

おぼえたい対象の種類によって覚え方が変わる。その見極め方を見つける本。

試験勉強で悩む人にはうってつけの本です。先に記憶術があるのではなく、まず覚える対象があって、それをどのような記憶術を使えば良いかの判断力が養われるのではないでしょうか。

そのような印象を受けました。ある意味実践的です。その背景を見たくて著者について調べようとしましたが、あまりデータはありません。

著者プロフィール

年齢も職業も不明です。でも、東京大学文学部を卒業して家庭教師として教え子に勉強の仕方を教えたという事は本に書かれています。

そして何よりこの本の全体から受ける印象が先の”実践型”である理由が、恐らく受験勉強にフル活用したであろう事からきていると推察できるのです。

この方、中学ではまじめで勤勉、恐らく模範的な学生だったのでしょう。でもクラスではいつも中の上でそれ以上いけない。そんな中学時代に記憶法や認知心理学の本を読み漁ったそうです。

そして高校時代には記憶術を使う自分なりの方法を身に着けて、それで成績が上がっていったそうです。

本の構成

この本は、3段階に分かれています。1.記憶のメカニズム、2.記憶の原則、3、記憶術 の3つです。

記憶のメカニズムは、短期記憶から長期記憶、そして忘却など一般的に言われている事が書かれています。

本のタイトルは9つの原則と14の記憶術と銘打っていて、構成も3番目がメインのように見えますが、私には2番目の「記憶の原則」がこの本の一番のウリではないかと思えます。

記憶の原則

記憶の原則がメインディッシュである理由。ここには、著者が恐らく受験で経験してきたエキスが満載なのです。

本の中では、中学から高校にかけて記憶術を自分なりに消化してきたけど、その時は体系的でなかったと語られています。

でも、私の経験で言うと使いこなしてくると誰でもそうなるはずなのです。これは場所法で、とか、これは関連法で、とかではなくごちゃ混ぜになる。逆に言うと、臨機応変に覚えるものの性格を見極めて記憶法を変えて対処してゆく、みたいな感じでしょうか。

そのような印象ではありますが、きちんと順番で整理はされています。特に、”ほら、これでは覚えられないでしょ”というワークが面白いです。

1枚の絵があります。ここに注目して覚えて下さいとまず指示されます。それは、記憶できない方法です。そして2回目には覚えられる方法でその絵を見るというものがありました。

また、反復練習では効果のない反復をさせられます。そして2度目に効果のある方法、更に3度目には関連付けて覚えるともっと効果のある方法と、段階的なワークになっています。

これはまさにご自身がやってきた経験をそのまま伝えている感じがします。特に受験で覚えるものは、リンゴとか猫を覚えるのとはわけが違った難解な壁が立ちはだかります。

それを回避する方法をここで伝えているのです。記憶の干渉や忘却の対策。特に「反復しすぎは効果的でない」は、なるほどと言える根拠がありました。この部分は必見です。

レベルの高い学習者向け?

記憶術のセクションでは14の記憶法が順を追って説明されています。一番に関係法がきて、語呂合わせとか数字のおぼえ方などがあって、最後が場所法です。

どの記憶術にも登場するのが大学受験で悪戦苦闘した結果のようです。

そのうちのいくつかは紹介はここでするも実際には使えない、みたいな事も書かれています。全体を通してみると、関係法が一番使っていたのではないかと思われます。

場所法はワークもなく説明だけで終わっています。それよりも関係法がメインで事例も様々でています。

そして、そのじれがまさに著者が受験で使ったのであろう覚え方のサンプル多々出てくるのです。それは高度です。

例えば冒頭の関係法の説明では、世界史で1867年のアラスカ買収を覚えるために、日本での大政奉還と合わせると書いています。つまり大政奉還の年を先に覚えておく必要があるのです。

でも、そのレベルの人たちにはこれで良いわけです。

他にも例に挙げているのが紀元前200年に地球の大きさを示したエラトステネスのおぼえ方とか、天動説と地動説それぞれの提唱者の名前のおぼえ方とか、各所に出てきます。

世界史の中でも、これは場所法、これは関係法、これは語呂法と使い分けてきた軌跡がそこに見え隠れします。まさに試行錯誤の現れ、実践的です。

そこには時間短縮のノウハウもあり、例えば歴史の語呂合わせは自分で考えずネットでググれば出てくる、などと、記憶術講師では言わなそううなユーザー目線のアドバイスも出てくるのです。

という事で、著者のご意向とは違うかもしれませんが、私なりに解釈したこの本の中身を紹介してみました。amazon unlimited に入っていれば実質無料で読めます。でも、99円なので他に読まなければ買ってもいいですね。 お勧めです。購入はこちら

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