記憶術あれこれ

「記憶のデザイン」読んでみた

 

“記憶のデザイン”て何だろうと思って手に取りました。パラパラめくると、どうやらこのSNSの時代に頭の中の記憶をどのように整理するかという事が書かれているみたいなので、読んでみる事にしました。

記憶のデザイン
山本貴光 著
筑摩書房 刊

著者プロフィール

慶応義塾大学環境情報学部卒業後コーエーでゲーム制作。その後、文筆家・ゲーム作家

数々出版されている本のテーマは、文学や哲学、脳やコンピューター、AIなど多岐にわたります。

本の目次

  • 序章 記憶の現状
  • 第1章 検索すればOKか
  • 第2章 4つのエコロジー
  • 第3章 記憶と自然
  • 第4章 記憶と社会
  • 第5章 記憶と技術
  • 第6章 記憶と精神
  • 第7章 記憶のデザイン

構成と概要

冒頭で注意されているのが、これは記憶術の本ではないという事です。現状起きていることを考える材料を与えるものだと述べられています。私自身は読んでみて現状を俯瞰する哲学的な本に思えました。

目次は章に分かれてはおりますが、大きくは3段階に分かれていると思います。「現在の状況」と「エコロジー」、そして「記憶のデザイン」です。

現在の状況

序章~第1章で説明しているのが、現状の社会と私たちの記憶の状況です。

人類の歴史上、文字や画像などをのべつ幕なしでやりとりする事は今までなかった。ぼう大な情報を扱う環境の中で、自分の記憶をよりよく世話する必要がある。それが記憶のデザインとの事です。

例としてアニメ映画・イノセンスの会話を取り上げています。脳内から外部のネットにつながっていて、そこから情報を得て会話をしているシーンです。これは今、私たちが喫茶店などで話しながらスマホ検索して語るのと似ています。

このような例から。現在、起きている問題点を3つ挙げています。

  1. 次々と記憶が置きかえられる情報環境をどうとらえるか
  2. 検索できるから記憶しなくて良いか
  3. フェイク情報の真偽をいかに見分けるか

例えば

2番。今はググれば何でも出てくるので、いらないものを覚えなくても良くなった。それが妥当か?と投げかけています。

エコロジー

フランスの精神学者フェリックス・ガタリが提唱した自然、社会、精神の3つの要素に著者が技術を加えた4つのエコロジーについて、状況を詳細に伝えています。

これが第2章から第6章と大きく占めています。ちなみに、冒頭で書かれているのがこの本は読者に材料を与えて考えてもらうためもの、としています。

その意味では、ここで読者にいろいろ考えてもらいたい部分なのかもしれません。

例えば第5章の「記憶と技術」では、スマホで1日何回も見る営みは私たちの記憶に何をもたらしているのだろうという問題提起から、例えば「記憶の遠近感、狂っていませんか?」という投げかけがありました。

これは、10年も前に書いたフェイスブックの情報が何かアルゴリズムで今の自分が目にする事がある。という事が例に挙げられています。良い悪いについては言及していません。

そして自分自身がSNSで時間をうばわれたり気が散ったりした経験から、それを遠ざける施策をうった話も登場します。

記憶のデザイン

そして、いよいよ自分の記憶の世話をする話です。記憶術・場所法にはじまり、シャーロックホームズとワトソンの物の見方の違いや情報分析を参考に情報処理法について語ります。

実本と電子書籍の違いについて。これも良い悪いの判断はそこにはなく、ただ俯瞰して読者に委ねる形を採っています。

そして、そこから提案になってゆきます。それは、私たちに向けてではなくコンピュータに向けての話です。

現在のコンピュータは人間の記憶にとって身の丈に合ってない。現在のOSは膨大なデータを扱う事はできるが、把握しにくく操作もしにくいというのです。実は、これは私も全く同感です。

そこで、ゲーム制作者らしく次世代の(恐らく予言の)OS像を掲げています。知識OSと知識アトラス。知識はあつ森を例に出して、あのような世界で情報を引き出したり整理したり扱いやすくするもの。アトラスはバックグラウンドの知識や情報に容易にアクセスできるものです。

まとめ

以上、概要だけさらっと流しましたが、自分自身に当てはめて考えてみるには良い本だと思います。ご興味のある方は是非手に取ってみて下さい。