サブタイトルは「 脳科学による世界一無理のない勉強法」です。海馬が短期で側頭葉が長期記憶など、確かに脳科学について書いてありますが、それを伝えるのは本意ではないようです。
勉強をしなければいけない人の苦しみを取る、というのが一番正しい見方だと思います。だからサブタイトルが無理のない勉強法なのだと思います。
苦しまずに勉強する方法
記憶術とは言っても場所法やストーリー法などいわゆる記憶術を解いているわけでもありません。
もともと受験生を大学に送り出すプロなので、その視点で勉強の仕方を教えています。しかし、それだけではありません。とても奥が深い本です。
構成としては、ハルカさんというOLが悩んでいてその相談に出口先生がのってあげているという設定です。詰め込み教育で学校を出て現在OLの設定です。会社では新人教育を任されたりTOEICを受ける目標を立ててたりします。
これがペルソナ設定なのかな、と思いきやそれだけではない。高校生や受験生まで幅広く勉強のコツを教えてゆくのです。
著者は関西学院大学の博士課程を出て代々木ゼミナールや東進ハイスクールなどの教壇に立ち、旺文社のラジオ講座もやったりして、更には出版社を設立したりと輝かしい経歴です。でも、そこに至るまでに医学部を目指して3年間の浪人生活があったそうです。それは恐らく精神的にもとてもツラい勉強時代だったのではないかと容易に想像できます。
つまり勉強する側の心の痛みを良く知っている、それを取ってあげたいというのが伝わってくる本なのです。
このハルカさんにはとにかく記憶しないようにと勧めています。解くん単純な暗記と単純反復はやめよ、と言っています。
目次
記憶は論理力
記憶するには論理力。それは普段誰でもやっている事で、そのように意識を変えるだけだそうです。論理力とは難しそうですが、ただ3つの事を守るだけ。
- イコールの関係
- 対立の関係
- 因果関係
の3つです。単純に暗記するのではなく、ほとんどの事を論理的にこの3つにあてはめて覚えれば楽だとの事です。
例えば、英単語では同義語がイコールだし、対義語が対立。歴史では何が原因でその事件が起こったかを知る。そのような事です。関係を頭に入れて勉強をしてゆく事で格段に記憶が楽になると言っています。
それは、もしかしたら普段学校でも言われている事かもしれませんが、それをどのように具体的に勉強の中でやってゆくかを事細かに記しています。
この論理力は誰もが高める事ができる。残念ながら遺伝子などの関係でどうしても頭の良し悪しは分かれるのは確か。でも、論理力を高める事はできるとの事です。
その論理的なおぼえ方をするようになると、”記憶しない事”というのが理解できるそうです。
楽して覚える、苦しまない方法は随所に出てくるのですが、その一つに単語帳の買い方がありました。買う時に自分のレベルに合わせる方法です。パラパラめくって半分以上知らない単語だったら買うな、というものです。
これが印象的だったのは、普通は逆だと思うからです。半分以上知らない方がこれから勉強するのに役立つと思いそうなのに、そうではないのです。何故か。
その先は勉強するときの苦しさなのです。段々重荷になってくる。半分知っていれば残りを覚えれば良いという心理的負担を下げるという事なのです。
このように、具体的に勉強を楽にするための方法が様々書かれています。多くの受験生を見てきた結論なのでしょう。ノートの書き方から部屋の整理まで、ありとあらゆる事が書かれています。
1年間記憶
短期記憶や長期記憶だけでなく、この本ではもっと細かくみています。
特徴的なのは1年間記憶。なるほど、と思いました。受験を目指すには長期の記憶ではなくとにかく1年間記憶すればいいという事です。
そのためにどうするか。という事も書かれています。1学期に英語・数学をはじめ2学期から社会や理科を始めるやり方はしないように、とか、エビングハウスの忘却曲線を例に挙げてどのタイミングで反復をするか。そしてどのようにスケジューリングして習慣化するかなどについても記されています。
記憶が雪だるまのようにまとまる
そして、最後(だと思うのですが)の結論が、その先に「雪だるま記憶術」になるというものです。これは全ての教科に言える事で、年号と物事のような単発の記憶ではなく全体が膨らんでゆく記憶になってゆくという事です。
記憶術を考えるときには、とても参考になる本です。
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